電動アシスト症例(ペダルを漕いでも進まない!)
今回はコル先生の兄弟、脱力系看護師のラル君に登場していただき、少し珍しい症例をご紹介します。
お持ち込みいただいたのは電動アシスト自転車です。
症状は、
「ペダルを漕いでも後輪が回らず進まない」
というもの。
実際に確認してみると、
ペダルを回しても前のギアが回らない。だからチェーンも動かない。
チェーンが動かなければ後輪も回りません。
電動アシスト自転車でこの症状が出ると、多くの整備士がある部品を疑います。
それはモーター。
モーターの中には複数の歯車が組み込まれており、過剰な負荷をかけ続けてしまうと歯車が消耗してしまい、噛み合わなくなる事があります。
実際に、お客様が他店にお持ち込みの際、モーターの不具合と診断されて、高額修理になると言われたそうです。
購入してまだ三年少々。
交換する事を決断されたそうです。
数週間後に進捗を確認するも、症状は改善しておらず、不具合原因は不明のまま元の状態に戻されて新車購入を勧められたそうです。
どうしても諦めきれずに、最後の確認で当店へご相談にお持ち込みいただきました。
整備士目線で考えること
症状だけを聞くと、確かにモーター側のトラブルを疑いたくなります。
しかし私が気になったのは別の部分でした。
すでに他店でモーターを交換したのに症状が改善されなかったという事は、モーターが原因だとしても他の要因が残っている可能性が高いという事です。
「本当にモーターが原因なのか?」
から確認のスタートです。
最初に始めたのは動作確認
他店で確認をしての対応だったと思いますが、今一度自分の目で症状を確認していきます。
一般的な自転車と電動自転車では構造が大きく異なります。
この自転車の場合はペダルを取り付けるクランクアームと、歯車と、軸がそれぞれ単体で動作するという事です。(メーカーにより構造が異なり、一般的にはクランクアームと歯車は一体となっています)
その為、漕いでも空転してしまうという症状が出ている場合、それぞれに原因となる可能性が出てきます。
チェーンカバーを外して全体の動作を確認してみると、すぐに原因が分かりました。

問題はギアの歯をモーターに固定している組み付け部分でした。
本来であれば漕いだ力でモーターが回転し、モーターに組付けされた歯車がアシストされて回転するのですが、組み付けている山が全て削れており、モーターから歯車に力が伝わらず空転していたのです。

もちろんモーター側にもダメージが出ていたのですが、内部ではなく外部の連結部のみの消耗。モーターだけ乗せ換えてもこれでは改善しません。
モーター保証は切れていたのですが、痛みの出ている組付け部のままギア歯のみ交換するのも再発リスクが高い為、ダメ元でとりあえずメーカー交渉し、当初の予想よりははるかに価格を抑えて修理を完了させる事が出来ました。
本当に見ているポイント
今回の修理で直したのは摩耗した部品です。
しかし私が見ているのは交換した部品だけではありません。
なぜこの部分が摩耗したのか。
どれくらいの期間をかけて進行したのか。
他の関連部品に影響は出ていないか。
再発の可能性は無いか。
作業をしながら常にそんなことを考えています。
部品は故障の経緯も語ります。
壊れた部品は結果ですが、その壊れ方には必ず理由があります。
今回の症例も症状だけにとらわれず、原因を追いかけた結果、解決する事が出来て良かったと思います。





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