安いのにかっこいい!スポーツバイクの罠(ホイール編)
ディスカウントショップやネット通販などで、見た目が本格風な廉価スポーツバイクをよく見かけます。
存在感のあるホイールリム、細いタイヤ、太めなエアロフレーム形状。
一見すると、トップレーサーが使っていそうな、とても速そうなデザインのカッコいい自転車です。

「この見た目でこの価格ならお得!」
そう思って飛びつく方も多いようです。
しかし、自転車屋で実際に修理をしていると、予想外なトラブルや意外な事実で困られている方によく出会います。
今回は、その中でも特に多い「見た目重視のスポーツバイクの注意点」についてお話します。
見た目で選んでしまいがち。エアロホイール!
今回は特にこのホイールについて深堀したいと思います。
ホイールを仕分ける基準はいくつかありますが、今回のポイントはリムハイトと呼ばれるリムの高さです。

一般的な分類では
ロープロファイル(20~30mm程度)
ミドルプロファイル(35~50mm程度)
ハイプロファイル(50mm以上)
これが自転車の印象を大きく左右します。
ロープロファイルリムはママチャリなどでみられる四角い感じのスタンダードなサイズです。
ミドルプロファイルは一部の入門用スポーツバイクでも採用されている、力の伝達性を向上させるサイズです。
ハイプロファイルは、エアロホイールとも呼ばれ、高速走行時の速度維持や空力を考慮した形状になっています。そのため、レースなどでも使用されることが多く、印象としてスピーディーなイメージになります。
リムの側面に大きなデザインや文字が入っている事もあり、見た目のインパクトも絶大です。
エアロホイールが使用されている自転車は見た目の良さが強調され、購買意欲につながりやすくなるのでしょう。
安価な車体のディープリムの問題点
ここで問題になるのは「質」です。
本来、力の伝達性と空力を考えて高速化の為にハイプロファイルにするのですが、軽くなければ意味がありません。
そのため高額な軽量素材を使用します。
ですが、安い車体にその予算はかけられないため、重量は無視して安価な金属で作成します。
結果として非常に重量のある自転車が出来上がります。
重たい車輪は走り出しにも影響し、漕ぎ出しも重く感じるでしょう。
実際に、速そうだから買ったのに、思ったよりも速く走れないというご相談も承ります。
安価モデルでの空力のメリットはほぼ無し
ハイプロファイルの空力性能が活きるのは、高速で走り続ける場面です。
しかし、通学や街乗りでは、
・信号で停止する
・交差点で減速する
・坂道を上る
・頻繁に発進する
という場面が多くなります。
総重量が重たい場合、加速感が悪く、速度が乗る前に減速する機会が多く、形状の特性を生かすことが困難です。
このような使用状況では空力性能よりも、
・漕ぎの軽さ
・丈夫さ
・扱いやすさ
・修理のしやすさ
の方が重要になることがあります。
安価なエアロホイールはデザインを優先した結果、特筆する機能的メリットが無くなってしまったパーツと言えるでしょう。
パンクにも注意が必要です
ハイプロファイルでよく問題になるのが、タイヤの空気圧管理によるトラブルです。
スポーツバイクはタイヤが細いため、空気圧管理が重要です。
しかし、初心者の方の場合、
「空気を入れる頻度が分からない」
「どれくらい入れればいいか分からない」
ということも珍しくありません。
ハイプロファイルの場合、空気圧が低い状態で段差に乗り上げると、【リム打ちパンク】の確率が上がります。
縦方向に強度のある深めのリムは、タイヤに加わる路面からの衝撃を逃がすのが不得意です。
チューブが蛇に噛まれたように切れてしまい、交換が必要になるケースもあります。
また、圧不足走行でチューブがずれても、ハイプロファイル用の長いバルブはズレにくく、根元で引きちぎられる症状が出やすくなります。
結果として、パンク=チューブ交換 となりやすいのです。
さらに困るのは、深いリムに対応したロングバルブチューブです。
70mm以上のバルブ長が必要な場合、自転車屋でも常備していない事があり、取り寄せになる事もあります。
「パンクしただけなのに、すぐ直せない」
ということも起こってしまう可能性があります。
リムが曲がると修理も難しくなります
ハイプロファイルは縦方向に強い反面、横からの力に弱いと言われています。
リムの厚みが増える分、スポークが短くなるので、スポークの張力調整の難易度が上がります。
ロープロファイルではごまかしが利く程度の振れでも、ハイプロファイルではホイールの交換になる事もあります。
見た目の迫力がある分、修理時には注意が必要な部分でもあります。
安い自転車が悪いわけではありません
ここまで読むと、「安いスポーツバイクはダメなのか」と思うかもしれません。
しかし、そういう意味ではありません。
どのクオリティで満足するかなのです。
謎ブレーキや謎変速機がついている事もあります。
価格を抑えた自転車は、どこかでコストを下げなければなりません。
低コストなパーツの制度には限界があります。
乗り味に大きな違いが出てしまうのは仕方ありません。
所有した時の満足感と言うのも選択肢の一つですから…
自転車は見た目だけでは選べません
カッコいい自転車に乗りたい。
その気持ちはもちろん大切です。
しかし、自転車は買った瞬間がゴールではありません。
メンテナンス、タイヤ交換、パンク修理、部品交換など、乗り続けるための維持管理があります。
購入前に、
「この自転車は自分の乗り方に合っているか」
を少し考えるだけで、後悔する可能性は大きく減ります。
買ってくれさえすればよいと考えるメーカーは、低コストで安い部品を使用し、どうするとどうなるかも考えずに見栄えが良い自転車を作ります。
個人的にお勧めしたいのは、文句なしの【見た目】よりも、文句なしの【使い勝手】です。





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