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ローラーブレーキの惨劇

giorgioarumani888
7月19日
読了時間: 4分

今回はラル看護師が持ってきた少し珍しい症例をご紹介します。

お持ち込みいただいたのは業務で使用されている電動アシスト自転車です。

定期点検で当店を初めてご利用と言う事です。

お客様からの不調に関するご申告はありませんでした。

お預かりさせていただき、早速整備へと取り掛かります。

所定の項目を淡々と進めていくと、ある部分に目が留まります。

それがこちらです。

本来は銀色のローラーブレーキですが、真っ黒な汚れが付着しています。

(状態確認の為、上部とフィンの汚れを一部こそぎ取った画像です)

一見すると単なる汚れの様ですが、整備士としてはこの異常な汚れが少し気になります。


そもそも、ローラーブレーキとはどのようなブレーキでしょうか。

主に一般自転車の後輪に採用されるブレーキシステムの一つです。

廉価版のブレーキの場合、ゴムのベルトで回転を押さえるバンドブレーキが使用されています。ブレーキをかけるとゴムの摩擦で高音で響く事があり、とても不快に感じる方もいらっしゃいます。

一方、ローラーブレーキはゴムベルトではなく、金属ローラーを採用している為、不快な音が鳴りません。

ところが、金属による負担が大きくなるので、内部に専用グリスを必要とします。

使用と共に内部のグリスは減っていき、定期的な補充をする必要があります。


気になったのはこの汚れの原因がローラーグリスの可能性が非常に高いという事です。

内部に必要なグリスの量は適量です。

見た目から予想されるのは

・グリスが過剰に注入されている?

・ブレーキの動作は正常?

・内側にあふれている可能性?

・車輪の中にも汚れが侵入している?

・車輪の回転が悪くなっている?

・変速は正しく動作する?

と、順番に可能性が浮かんできます。


拭き取った汚れを確認してみると、やはりブレーキ本体からはみ出したローラーグリスでした。

汚れているから不具合があるという訳ではありませんが、確認が必要になります。

ブレーキはかかっていないのに後輪を回してもすぐに止まってしまいます。

過剰なグリスがどこかで回転の抵抗になっていることが予想されます。

電動アシスト自転車の場合、このように回転が重くてもモーターが補ってしまうため、お客様自身が気付かない事もあります。

しかし、回転が重いということは、常に余計な負荷をモーターへかけ続けている状態。

電力消費も早く、モーター寿命も短くなってしまいます。

車輪を取り外して、ブレーキを外してみると原因は明らかでした。


やはりブレーキ内部には大量のグリスが充填されており、行き場を失ったグリスはブレーキからあふれ出ています。

あふれ出たグリスは砂埃などと混ざり合い、ものすごい粘り気になっています。

そして、車輪側を見てみると汚れたグリスが軸の中に侵入している状態です。

ブレーキ単品で動作確認をすると過剰なグリスが妨げになり、スムーズに回転しません。

車輪だけを回しても内部に侵入したグリスにより、回転が止まってしまいます。

どちらも内部の洗浄が必要になります。


修理内容

・表面上の汚れの混ざったグリスを取り除く

・ローラーブレーキの洗浄

・適正なグリス量注入

・ハブ内部洗浄

・ハブグリス注入

そして、組み直したところ正常な回転を取り戻しました。

本来、ブレーキ内の適正グリス量は約5g程度ですが、今回の作業で取り除いたグリスはおそらく100gほどでしょう。

その結果、

・ブレーキの回転異常

・後輪回転の悪化

・各部の汚染

を引き起こしていました。

何故この状態に至ったのか。

おそらく、不足していないのに整備のたびにグリスを注入し続けた結果と思われます。

このように目視で汚れているのを確認するだけではなく、その汚れによって何が起きているのかを予測するのも整備士の仕事です。

今回も、見過ごすことで電動アシストの寿命を縮めてしまう可能性がある症状を回復させることが出来ました。

これからも、お仕事で元気に活躍してもらいたいですね。

 
 
 

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