タイヤ偏摩耗編 その2
今回はタイヤの偏摩耗第二弾です。
以前のタイヤ偏摩耗記事の最後で前振りをした別パターンの症例ですが、まさかのスポーツ車より先に電動自転車の来院となりました。
走行中に突然「パン!」という大きな音を立てて空気が抜けたとお持ち込みいただきました。
コル先生が診断したのがこちらのタイヤです。

画像で答えを出してしまいましたが、タイヤの内側からウェスを強く押し当てているので、タイヤが切れているのが良く見えます。
ですが、タイヤの走行面は新品同様。空気が抜けた状態で車輪に装着されていると、中のチューブも黒いので、お持ち込みいただいた段階での確認は難しい症状です。
コル先生は預かった自転車の諸症状を見て、何が原因でパンクしたのかある程度予測していました。
・タイヤの車輪付近に黒く擦れた痕跡がある事。
・ブレーキパッドの残りが少なくなっている事。
・ブレーキレバーを握ってみると、タイヤの方へとはみ出すブレーキパッド
が確認できました。
おそらくパンク修理では直らないでしょう。
タイヤとチューブの交換、そして、ブレーキの修理が必要になるであろう事をお伝えしてから、予測との照らし合わせ作業の開始です。
まずは通常通りのパンク修理の為前輪を外してパンク修理の手順を踏んでいきます。
パンクの状態
チューブを取り出して空気を入れると、水通しをするまでもなく、勢いよく噴き出す空気によって穴の場所はすぐに特定できました。
チューブの走行面ではなく、側面に開いた穴です。
ただし、何かが刺さったような穴ではなく、穴を中心にして左右にこすれたような傷が入っています。
チューブ側面の擦れたようなパンクの場合、段差などの乗り上げによるリム打ちパンクと言われるケースもありますが、今回の穴は少し大きめ。
チューブだけの診断ではなく、車輪からタイヤを取り外して状態を確認してみると、現れたのが冒頭の画像のタイヤの切り傷です。
タイヤの切り傷の原因
なぜこんなところに傷が入ってしまったのでしょうか。
空気圧不足のタイヤに車輪が食い込む事で同様の症状になる事もあるのですが、今回の自転車の場合、後輪にはしっかりと圧力がかかっているので、前輪も空気圧は問題なかった可能性が高いと判断しました。
そこで考えられるのはブレーキパッドです。
ブレーキをかけた時に、消耗したブレーキパッドはタイヤとの距離が近づいてしまいます。
更に消耗が進んでしまうとパッドがタイヤに接触してしまうのです。
パッドを取り外してみると、交換の目安となっている溝はすでに無くなっている状態でした。

結果として、消耗したブレーキパッドがタイヤに接触した事により、徐々にタイヤの側面を偏摩耗させていき、タイヤを切ってしまったのです。
この接触の厄介なところは、明確な異常としてすぐに現れないこと。
・使うたびに少しずつタイヤを削っていく
・ブレーキの反応は遅いけれど、とりあえず効いてしまう
・目視で気付きにくい
なんとなく不調な気はするけれども、とりあえず乗る事ができるから問題はないという考えに陥ります。
こうして時間をかけてタイヤへのダメージを蓄積させていきます。
パッドがタイヤに接触する原因
主な接触の原因には
・パッドの残量不足
・パッドの緩みや位置ずれ
・追突などによるフロントフォークの曲がり
・車輪の振れ
等が挙げられます。
そして限界点で一気に破綻へと
ある程度進行すると、タイヤの側面は薄くなり、内部のチューブ圧に耐えられなくなって起きるのが
・突然の空気抜け
・場合によりバースト(破裂)
となります。
まるでお餅切れ目から中が飛び出してきてはじけるような症状です。
まとめ
今回のケースは「タイヤのパンク」ではなく、「ブレーキ修理の放置による二次被害」です。
作業としては、タイヤとチューブの交換。合わせてブレーキパッドの交換となってしまいました。
予防はシンプルで、
・適正なタイミングでのパッド交換
・自転車の定期点検
この二つでほぼ回避できます。
パッドの交換をしておけば、今回のタイヤとチューブの交換は防げました。整備士として非常に悔しいケースです。
小さな摩耗を見逃さない事が大きな出費を抑える秘訣です。
静かに進むトラブルほど、結果は派手に出る事があるのでご注意ください。





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